【良庵の台所|第3回】日本人の9割の腹に、海からの遺伝子が入っている

こんにちは。今日も台所から、良庵です。
この回は動画でも聞けます(約6分)。
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前回の終わりに、
海苔の話に触れさせてもらいました。
おにぎりに巻いてある、あれです。
味噌汁に浮いていることもある。
毎日のように食べているのに、
自分が海苔を消化できているかどうかなんて、
考えたことありますか?
私は、ありませんでした(笑)。
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まず、ひとつ白状しておきます。
海苔の、あのぬめりのもと。
ポルフィランという、
糖が長くつながったものです。
これ、人間の体では分解できません。
胃も、腸も、
こいつをばらす道具を持っていない。
日本人でも、です。
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じゃあ、誰が分解するのか?
海の中に、いるんです。
海藻にくっついて暮らしている細菌が、
ポルフィランをばらす道具、
つまり酵素を持っている。
海藻を食べて生きているやつらですから、
まあ、当たり前の話です。
ここまでは、海の中の話。
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2010年のことです。
フランスの研究チームが、
この酵素の設計図、つまり遺伝子を、
妙なところで見つけました。
日本人の腸に住んでいる細菌です。
海の細菌が持っているはずのものを、
腹の中の住人が持っていた。
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調べ方は、こうです。
日本人13人と、
北米に住む18人。
腸の中の細菌の遺伝子を、比べてみた。
見つかったのは、日本人の側だけ。
北米の側からは、出てこなかった。
ネイチャーという科学誌に載った話です。
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ただ、13人です。
たまたまじゃないのか?
そこ、気になりますよね。
六年後、日本の研究チームが、
もっと大勢で調べ直しました。
日本人106人と、
ほかの11か国の人たち。
道具が見つかったのは、
日本人のおよそ九割。
ほかの国は、ならして一割半ほどでした。
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2026年にも、
もうひとつ報告が出ています。
日本人五千人あまりを、
世界三十六か国と比べたものです。
結果は、やはり九割。
欧米からは、ほとんど出てこない。
お隣の韓国は、日本と同じくらいでした。
あちらも、海苔をよく食べる国です。
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つまり、こういうことです。
日本人の腹の、およそ九割に、
海から来た恵みが備わっている。
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なんでそんなことが起きたのか?
研究者の見立ては、こうです。
昔の日本人は、
海苔を生に近い形で食べていた。
海苔には、海の細菌がくっついている。
それがまるごと、腹に入る。
そこで腹の住人が、
海の細菌から設計図を写し取った。
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日本人と海苔の付き合いは、
古いんです。
千三百年ほど前の大宝律令には、
海苔を税として納める決まりがある。
お上に納めるくらいですから、
値打ちのある食べ物だったんでしょう。
それだけ長いこと、
腹に入れ続けてきたわけです。
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細菌というやつは、
よその菌から遺伝子をもらうことがあるんです。
人間でいえば、
隣の店の職人から、
包丁の研ぎ方を教わったようなものです。
教わったほうは、
それを次の代へ伝えていく。
長いこと海藻を食べてきた台所が、
腹の住人に、道具をひとつ持たせた。
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道具を持った住人は、
海苔のぬめりを、
自分の飯にできます。
ほかの住人が手を出せないものを、
ひとりで食えるわけです。
腹の中も、
なかなか世知辛い(笑)。
食いぶちのあるやつが、
居着くんでしょうね。
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ん?ちょっと待てよ。
気になったので、
うちの海苔の袋を見てみたんです。
焼き海苔、と書いてある。
焼いた海苔に、
生きた海の細菌は、まず残っていません。
それなのに、今も九割。
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道具を写し取ったのは、
ずっと昔の話なんでしょう。
いったん道具を持った住人は、
腹から腹へ、引っ越していく。
親から子へ。
昔の台所の仕事が、
今の腹に残っている。
そう考えられています。
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誤解のないように、ひとつ。
道具を持っていない人が、
海苔で腹を壊す、
という話じゃありません。
持っていなければ、
食物繊維としてそのまま通っていくだけ。
持っていれば、
腹の住人の飯になる。
違いは、そこです。
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前回、
「日本人全員に合う菌は、まだ言い切れない」
と言いました。
そこは変わりません。
でも、
食べ続けてきたものに、
腹の住人のほうが合わせてくる。
これは、本当にある。
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味噌、漬物、醤油。
日本の台所で長く食べてきたものなら、
腹の住人とも、付き合いが長い。
だったら、馴染みやすいんじゃないか。
ここは私の見立てです。
証明された話じゃありません。
ただ、台所に立つ理由としては、
十分じゃないですかね。
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次回は、漬物の話です。
漬物なら、
何でも発酵している。
そう思っていませんか?
冷蔵庫の中に、
ちょっと怪しいやつがいます。
今日はこのへんで。
台所に戻ります。
良庵
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橋本です。
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